オーダーでカジュアルなリビング仏壇を製作しました。新居にお仏壇を移すに際し、コンパクトなリビング仏壇を探しておられましたが、これまで代々使われていた立派なお仏壇のご本尊、お位牌、仏具その他を収納するため市販品ではサイズが合わず、縁あって当工房にご依頼となり、メールや図面、写真で各部寸法に至るまで相談をくり返しの上製作しました。

木材にお詳しい施主様の要望で、全面にウォルナット無垢材をふんだんに使用、オイル仕上げでウォルナットの重厚さと端正さを活かした仕上がりになりました。
通常の家具は、内側は多くの場合普段目にしませんので、見た目の悪い面を持って行ったり塗装に手を抜いたり、とかく内側にはあまり気を使わないものなのですが、仏壇というのはそれとは異なり、「外側も内側もすべておもて面」、むしろ「昼の間は内側がおもて側」という側面があります。
内面、外面とも材の選択や配置、仕上げともに気を抜けないところです。
特に背板は(普段なら「シナ合板で良いっか」とかなるのですが(笑))ご本尊や仏具を飾る重要な背景になりますので、木目を選び青い炎が立ち上るような模様の杢の材を選んで使いました。中央の飾りにはバーズアイメープルを配し、LED照明の光を受けてご本尊を引き立てます。

内部は取り外し可能な棚板(1段)とLED照明を設置しています。LED照明は従来の白熱電球に比べて発熱が少なく、電圧も小さく安全性の面でも有利です。暖色のものを選び暖かい雰囲気を狙いました。
欄間的な装飾として、なだらかな曲線を組み合わせた意匠を上部に取り付けました。座ってお参りされる際にLED照明が直接目に入らないようにと言う意図もあります。

必要時に引き出して使えるスライド式の仏具板を設置しています。
収納時には周囲と木目を合わせてあり、すき間も極力少なくして「何かがとって付けてある感」がなく違和感が目立たない設計です。

施主様と相談の上、広幅の抽斗を1杯、その下はフリー収納スペースとしています。上述の通り、代々お祀りしていた仏具その他備品が多く、奥行きも少し大きくして収納力を狙った設計になっています。
いずれもアンダーマウント・ソフトクロージング式のスライドレールを使用し、ぱっと見金具の存在は目立たず、軽い力でスムーズに引き出せます。

下部のフリー収納スペースには、ジャストサイズで収納できる経机をセットしています。この経机も施主と相談の上市販品と比べるとより大型になっており、これまでお使いのご経験が生かされています。
比較的大型になりましたので、デザインとしてはシンプルに、脚も細身にして運搬時の重量減を狙っています。畳のお部屋に設置するとのことでしたので、畳摺り(※)もぬかりなく設置しています。(※畳で使用する家具の脚先に取り付けられた横木のこと。擦れによる畳の損傷を軽減させることができる。)

外側の外観的には、4枚の折戸を持ちながら「リビングで違和感のない家具」からさらに一歩進んで「凸凹の少ない、塊(かたまり)感のある入れ物」のイメージでデザインしました。
扉はマグネットキャッチで閉じるようになっており、手がかりは極力シンプルに、手彫りで若干のハンドメイド感を醸し出しています。

意匠的には左右の前面扉を厚み方向に斜めにシェイプしており、台輪の白木(メープル)のチギリと相まって目に留まるポイントになっています。
今回、両面から金具が見えずらい「隠し丁番」と言う金具を使ったのですが、扉の端部を薄くすることによりこの隠し丁番を取り付ける箇所の肉厚が非常に薄く、シビアな設計になってしまい、どうやって取り付けようかと苦心しました。

前面扉や側面は一枚の板から木取りし、上から下まで木目が連続するように工夫しています。金具もなるべく目立たない色や構造のものを選択しています。
全体としては重両面の制約もあり、上側と下台を積み重ねる構造になっているのですが、その中で木目を連続するのにとても気を使いました。材料の厚みが厚ければまず大きな1枚の板を矧いで作り、それを上下にカットすればよいと思うのですが、もともとの材料が薄いため、大まかに上下用の2つに分けてから、マーキングした上で注意深く製材して矧ぐ、という手の込んだことをしています。向かって左側の面(写真の面)はかなり良い感じで成功しましたが、左側は結果としては木目のつながりは今一つでした。。

140cmと若干低めの設計のため、上部の天板も目に入るだろうということで手を抜かず、留めで枠を作った上で杢の入ったウォルナットの薄板をはめ込んであります。
おもて側からはネジ穴は一つもありませんが、何かあった際にメンテナンスできるように主要部分は分解できる構造になっており、LED照明やスライドレールに何かあった際も分解して対応が可能です。
私自身 仏壇自体が初挑戦で、その他数点今回も技術的にチャレンジングな課題がいくつかあり、作っている間は難航しましたが、完成してみると良い意味での手作り感を若干残しつつ、ウォルナットと言う良材のおかげで端正かつ重厚な感じに仕上がったと思います。
新しいお住まいでご先祖へ気持ちをより身近に、末永くお使い頂けると幸いです。
